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バウの道中記 2006年1月3日 梅田


【イカ焼きとミックスジュース】

年明けは、吹雪の中の移動から始まった。それも真冬の前線が本格的に吹き荒れている大荒れの日本海からである。

目指すは札幌。5日、6日の2日間札幌で開かれる重要な会合に出席するためである。

1月3日、残り一席しかなかった高速バスのチケットを入手して、中国自動車道の奥深い山間部にある落合インターから、田舎の正月休みを終えた人たちに混じって私は移動
を開始した。

この日の中国道はやはり宝塚辺りを先頭に渋滞が始まって、私を乗せた高速バスは六甲山の裏あたりにある舞鶴自動車道とのジャンクションからノロノロ運転の状態になった。

結局大阪の梅田には2時間遅れとなったが、ここまで来るともう安心だ。ここからは札幌に入って行くルートが豊富にあるからだ。今回の札幌行きのルートであるが、フェリーを使うことにした。その理由は至って簡単、安くって、それも寝ながら北海道まで行けるからである。

通常、北海道行きのフェリーは、大きく分けて日本海航路と太平洋航路になるが、今回の私は敦賀港から苫小牧に向けて、今年最初に出航するフェリーを使うことにした。

と言うのも本当は水戸の近くの大洗から出る太平洋航路で行くと、あまり冬の大波にも影響されずに船旅を楽しむことが出来るのだが、誰もが考える安全策は一緒なのであろう、あいにく、すでに満席となっていた。

梅田から敦賀インターに向かう高速バスの発車時間まであと2時間。私はやはり『あらしのよるに』を見ることが出来ないようだ。しばらく考えて腹ごしらえをすることにした。

大阪で生まれ育った私は、うまいものをたくさん知っている。と言っても庶民的なものばかりである。今日はあまり時間がないので近くの阪神電車の改札口に行くことにした。

まずは阪神デパートの地下食料品売り場で一番人気のイカ焼きを2枚ゲットした。大阪を良く知る人には、ここのイカ焼きがさぞかし懐かしいだろう。

この日も30人を越える人が店先に並んでいたが、このままで行くとイカ焼きを手にするまで30分以上かかりそうだ。そこで私はいつもの「手」を使うことにした。

『もうすぐ、イカ焼きが食べれる!』と熱い目線で行列を見守っている周りの取り巻きの中から、先頭あたりに並んでいる人の知り合いを見つけ出し「ミックスジュースをおごるからイカ焼き2枚、買ってほしい」と提案するものだ。

この日も私は快調である。一発で交渉成立。相手もミックスジュースを知っていたので喜んでくれた。早速ミックスジュースの買い出しのため、近くの出口から階段を降りて、阪神電車の改札口近くのジュース屋さんに向かうことにした。

このジュース屋さんも懐かしいと思う人が多いだろう。特に阪神電車でタイガースの応援に行くときなど、かかせない飲み物であるからだ。

ジュース屋さんはやはり混んでいたが、さすがいつもたくさんの客を相手にしてるだけあって、テットリ早い。

3杯のミックスジュースを手にして階段の所まで行くと、イカ焼き担当の二人がニコニコしながら降りて来た。

ここからは無言である。
双方ともニコニコしながら、握手をして物々交換をした。
無言のニコニコである。

私は一人階段に座って、イカ焼きをほうばることにした。

世の中は乱れきっている。イカ焼きとミックスジュースだけでこんなに『しあわせ感』が生まれると言うのにである。

自分は苦労ばかりしている、と言い切る人がたくさんいる。私流に言うと、その人たちは単に『しあわせ感』を忘れた人たちである。

要は、どの位の分量で自分の『しあわせ』とするか、自分の背丈に応じた『はかり』を持ち合わせていないのである。

それにしても、自分で、生きて行くための会話が出来ない人。周りの人に、双方が幸せになるための提案すらも出来ない人が多すぎる。

しかし、さっきの『ニコニコ無言』は痛快だった。
究極の会話はこの『ニコニコ無言』であろう。

年初めの私に、イカ焼きとミックスジュースは何かを伝えたかったのであろう。今年一年、『育ち直し』をやりながら、謙虚に生きて行くことにしょう。

全てのサインを見逃さないために・・・・・
 
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